どうも、
「回転する機械を見ると謎に鳥肌が立つ」
ことに定評があるmotoyamaです。
たぶん僕は前世で、なんかのマシンに巻き込まれて死んだんじゃないですかね。知らんけど。
それとは無関係だと思っていますが、
奇しくも今回のテーマは
「回転する機械」です。
motoyamaの連載『アレの名は』、第1回は
「バケットホイールエクスカベーター」。
「何をいまさら」感が178%くらいありますが、いいんですよ、そういう連載ですから。
さて、
知ってる人は知っている、
知らない人は全く知らない、
日常のどこに接点があるのか分からない…
そんなバケットホイールエクスカベーターは、
ざっくり言うと
「メッタくそデカい、土掘る機械」。
ざっくり過ぎますね。言葉も汚い。
もうちょっとマトモに言いなおします、
「史上最大の掘削機械(自走可能!)」
です。
でもね、
あまりにがデカすぎる存在を前にすると、
人間は語彙を失うんですよ。
というか、説明が要らなくなる。
「デカァァァァァいッ説明不要!!」
と、そうなるんです。
ひと目見れば!
さてさて、この記事についてですが。
あなたがもし、
- 重機萌え
- 工場萌え
- メカ萌え
- デカいもの萌え
という属性を備えているならド直球です。
万一そうでなくてもド直球です。
僕はストレートしか投げません。
小細工は無理です、
知能がティンパンディーなので。
あと、昨今の自粛ムードで視野が狭くなりがちなので、ちょっとした息抜きにもどうぞ。
ストレス発散の方法として、
- 今まで知らなかったもの
- スケールがでかいもの
- 訳の分からないもの
に触れるのはオススメですよ。
バケットホイールエクスカベーターとは
露天採掘に用いられる掘削機械です。
露天採掘(露天掘り)というのは、
原始的な採掘手法のひとつですね。
シンプルに、地面を掘る。
原始的なので、機械を大型化すれば採掘も大規模化できます。
で、「デカさこそパワー」という超シンプルな公式のもとに生み出されてしまったのが、この「バケットホイールエクスカベーター」です。
どんだけデカいか、映像でご覧ください。
デカすぎて恐怖を覚えます。
実はかれこれ1世紀にわたって使用されていて、20世紀半ばごろから大型化が顕著になってきました。
中でも、ドイツのTAKRAF社が製造した
「Bagger 293」は、2つのギネス世界記録に
認定されています。
認定された2つの世界記録タイトルは、
「最も大きい陸上車」と、
「最も重い陸上車」。
「車両」の枠を超えてませんかね…
でも、12基の無限軌道(キャタピラ)で自走するので車両です。
車両なんですが、トイレやキッチンも完備。
複数の乗員による交代制のもと、24時間掘り続けると。
「工場じゃねえか」とつっこみたいですが、
車両です。
「バケット」とは
回転部分についている、「土砂をすくいとるアレ」のひとつひとつがバケットです。
bucketは「バケツ」の由来ですが、スケールがケタ違い過ぎますね。
Bagger 293には18基のバケットがついていて、1つあたりの採掘量は6.6立方メートル。
6,600リットルですよ6,600リットル。
一般的な浴槽に300リットルもお湯を張れば満杯ですが、そのお風呂が22杯ぶん。
しかもバケット18基ですからね、
1回転で浴槽396杯ぶんの土砂をガリリゴリッと削り取るわけです。風呂1年分じゃねーか!
「ホイール」とは
言わずもがなですが、回転する部分のこと。
アーム先端のホイールは手前側に回転し、
土壌を下から上に削り取ります。
一日あたり何回転するのか知りませんが、
諸元表記載の採掘量は240,000立方メートル。
1回転あたり118.8立方メートル掘れるので、
およそ2020回転/日くらいでしょう。
ホイール直径は21.6メートルあり、
一般的な住居ビル7階分に相当するデカさです。
巻き込まれたら一巻の終わり。怖すぎる。
ちなみに、「うっかり」で30トン超のブルドーザーをすくい上げたことがあります。
オモチャかよ!
上の画像は、うっかり巻き込まれたドーザーと同タイプのもの。
「すいません、つい!」の程度がでかい。
「エクスカベーター」とは
excavator:「掘削機」の意。
パワーショベル、いわゆる「ユンボ」もこれに含まれます。
上の画像は、夜間稼働中のバケットホイールエクスカベーターの姿。
「どう見ても工場だろ!」な風景ですが、
いいえ、掘削機です。
こいつは「掘る」しかできません。
コンベアで土砂を流すことはできますが、
それを受けて運ぶのはトラックや貨物車。
掘るために生まれてきた、だから
「エクスカベーター」なんです!(息切れ)
名称についてこれ以上の説明は無用ですね。
バケットつきのホイールで、
エクスカベートするやつ。それが、
バケットホイールエクスカベーターです。
ところで、
「バケットホイールエクスカベーター」って、
めっちゃ語呂よくないですか?
声に出すとなんか気持ちいいですよ。
他にありそうで無い、この語感。
額に稲妻型の傷がある魔法使いが叫んでも違和感ないですね。
ちなみに「BWE」っていう略称あるんですが、
文字数かせぎのために引き続き
「バケットホイールエクスカベーター」
でお届けします。
デカさを思い知れ!バケットホイールエクスカベーターの諸元一覧
さて、ここまででバケットホイールエクスカベーターのデカさについて、充分お分かりいただけたのではと思います。
さらにお分かりいただくために、引き続き「デカさ」を掘り下げていきたいと思います。掘削機だけに。
下記、諸元表の出典はWikipediaですが、
なんかもう実感わかない数値なので大体でも誰も文句言わないのではと思ってます。
仮に何かのテストで
「Bagger 293の大きさを書け」と出ても、
「デカい」と書いておけば○がもらえるはずですよ。
最悪、「小さい」と書かなければ合格ラインです。おめでとう!
Martinroell - selbst fotografiert und zusammengesetzt von User:Martinroell, CC 表示-継承 2.5, リンクによる |
上記画像は「Bagger 288」のものですが、
スペックを見るとBagger 293と同等。
同等なんですが、
Bagger 293のほうがデカいです。
Bagger 293 | |
製造年 | 1995 |
乗員数 | 5 |
総重量 | 14,200t |
総採掘量 | 240,000㎥ |
全長 | 225m |
全高 | 96m |
シャーシ幅 | 45m |
無限軌道数 | 12 |
定格出力 | 16,560kW |
ホイール直径 | 21.6m |
バケット数 | 18 |
バケット採掘量 | 6.6㎥ |
参考までにですが、製造には5年ほどかかり、
費用は110億円だそうです。
130億円という説もあるんですが、
もはやどっちでも驚かねえ。
20億円が誤差に思えるスケール感です。
全長225メートル:11両編成の山手線と同じくらい
ブームと呼ばれる腕の部分の、端から端まで225メートル。
山手線11両編成がだいたい220メートルです。
そんな規模の物体が「1台の車両」だなんてバカげた話ですが、バカげた大きさなので衛星写真に写ります。
Googleマップで見てみましょう。
いますね。
見えにくい場合は、地図をちょっと下のほうにスクロールして拡大してみてください。
いくつか映っている機体がBagger 293かどうかは不明ですが、そうでないとしてもバケットホイールエクスカベーターであることに違いはありません。
しかしまあ、引きで眺めていると
「いかにデカくても所詮その程度か」
などと上から目線になってしまいますね。
まあ、僕はそれ以下の存在なんですが。
あらためて人間の小ささが分かります。
全高96メートル:仙台天道白衣大観音くらい
高さ100メートルの巨大観音像、仙台天道白衣大観音(宮城県仙台市)とほぼ同じ高さです。
初めてあの仏像を見たとき、そのデカさに遠近感を狂わされました。
バケットホイールエクスカベーターを遠くから見た時も、きっと似たような感覚になるのでしょう。クラクラきそう。
総重量14,200トン:マツコ・デラックス101,428人分
総重量なので乾燥重量と異なりますが、そのまま換算するとマツコ・デラックスさん10万人分の重さです。(マツコさん=140kgで換算)
東京ドーム2杯分のマツコさんですよ。
よくわからんけどやばすぎる。
バケットホイールエクスカベーター、おもちゃになっても規格外!
バケットホイールエクスカベーターは、当然ながらホビー業界にも進出しています。
そして、おもちゃになってもやっぱりデカい。
バケットホイールエクスカベーターに限らず、この手の建設重機系おもちゃには謎の魅力を感じてやみません。
やっぱり、「メカメカしいもの」「大きいもの」「力強いもの」は、男性遺伝子のスイッチを直撃するんでしょうかね。知らんけど。
ここでは、LEGOブロック/プラモデル/トミカシリーズで販売されたバケットホイールエクスカベーターを紹介します。
LEGO TECHNIC 42055
みんな大好き「LEGO」から発売。
「LEGO TECHNIC」シリーズ、
「42055 バケット掘削機」。
ブロック総数は3929ピース。
完成品は全長約72センチメートル、
高さ約41センチメートル、
幅約29センチメートルに。
「量産されている最大のレゴTechnicセット」として、この商品もギネス認定されています。
記事執筆時点で既に販売終了しており、
Amazonで見ると4万円超で売られていました。
僕は要らないですよ。
BUCKET WHEEL EXCAVATOR 289|ドイツレベル社
ドイツレベル社製品の
「バケットホイールエクスカベーター 289」。
よりリアリティを求めるならこれ。
スケールは1/200なので、完成品サイズは1メートル超。
LEGO以上に置き場に困りそうですが、そもそもこれを完成させられる作業場が確保できないと思うけどどうなの。
模型好きな方は、チャレンジしてみるといいかもしれないですよ。
ちなみに僕は要らねえです。
日本国内ではプラモデルメーカーのハセガワが輸入・販売。
価格は22,900円(税抜)。
2020年4月~5月発売と記載があったので、ぼちぼちでしょうか?
ロングタイプトミカ No.140|タカラトミー
ミニカーの定番「トミカ」シリーズ。
こちらは国内工業会社「カワサキプラントシステムズ」のバケット掘削機がモデルです。
表記は「バケットホイールエキスカベータ」。
科学力世界一なドイツのBaggerに比べるとチャチな印象受けるのですが、普通のトミカよりデカいです。
ホイールも回るし、キャタも転がるよ!
しかし残念ながら、こちらも絶版。
Amazonとかでは4,400円~で売られています。
元は980円です。ふざけてますね!
まあ、ふざけてなくても僕は要らないです。
映画やマンガに登場するバケットホイールエクスカベーター
これだけホビー商品としても販売されるくらいですから、バケットホイールエクスカベーターはきっと人気なんでしょう。
「ただデカい」それだけで、見る者に恐怖すら覚えさせるのだから、映画やマンガのモチーフにはうってつけです。
『遊戯王』や『ユンボル』には、バケットホイールエクスカベーターがモチーフらしきモノが登場するようです。
でも詳しくないので割愛。
ゴーストライダー2/主演のニコラス・ケイジがやりたい放題
出典:https://www.grunge.com/11581/scenes-worked-crappy-marvel-movies/ |
ゴーストライダー(ジョニー・ブレイズ)に扮するニコラス・ケイジが、作中で「Bagger 288」に乗り暴れまくります。
頭燃えてる系の主人公だからか、乗り込まれるやいなや炎を噴き始めるBagger。
もう見た目が地獄。悪魔。鬼。
地獄の高速回転火炎大車輪で悪者を蹂躙しますが、相手は武装しているとはいえ生身の人間。パッと見どっちが悪役か分かりません。
ニコラス・ケイジさんは相当なカーマニアだそうですが、さすがにBaggerは要らんでしょう。
要らんけど、
乗ってみたい、あわよくば操縦してみたいですね。というか操縦席、近いなホイールに。
トランスフォーマー…じゃねぇ!|ファンによる映像
Bagger 288がメッカメカにトランスフォームしてますが、公式な映像ではないんです。
プロによる犯行としか思えねぇ。
バケットホイールエクスカベーターを実際に見に行くには
一生に一度は直に見てみたい。
間近で見ると、さぞ壮観なんだろうな。
と、いうことで。
「バケットホイールエクスカベーターが稼働している、ドイツ・ハンバッハ採掘場へ行ってみました!」
…と、言える日を夢見ながら、行きかたを調べてみました。
ドイツはおろか、ヨーロッパに行ったことすらない僕なので、実際どう行けばいいのか皆目見当つきません。
ドイツへの直行便はあるのか!?
それとも、近隣国へ飛んだあとに陸路でドイツ入りするのか!?
そのレベルです。
ドイツ人の知り合いもいないし、じぶん史上 存じ上げてるドイツ人は「ルドル・フォン・シュトロハイム」と「オリバー・カーン」くらいなもんです。
まあでも、とりあえず空港行きゃなんとかなるんじゃないでしょうかね。
日本からドイツまでのフライト時間:約12時間
日本(羽田、成田、中部、関空)からドイツまでのフライトは、フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフまで直行便で約12時間。現在3社の直行便が運航。
直行便あるけど12時間。
これは厳しい。
アメリカ西部へのフライト経験は何度かあるのですが、帰りの飛行時間とほぼ同じくらいのようですね。
フライト中はヒマでしょうがなく、ずっと座席モニタで映画みてました。マット・デイモンが火星で自給自足するやつ。途中で寝ましたが。
やはり、そんな思いをしなければたどり着けないのかドイツ!
だが、これしきでへこたれてたまるか!
オレはBagger 293が見たいんだ!
日本⇔ドイツの往復航空券価格:約16万円
で、Bagger 293が稼働している(と思われる)ハンバッハ採掘場は、直行便がある上記のどの空港からが近いのでしょう?
- フランクフルト
- ミュンヘン
- デュッセルドルフ
センター試験・地理は100点中52点の僕です、地名を辛うじて知っていても、それらの街がどういう位置関係なのかさっぱりです。
「ドイツ」と聞いたら「フランクフルト(食い物)」と「ザワークラウト」しか思いつきません。知能が酸っぱすぎます。
それはともかく、目的地・ハンバッハの位置を確認です。
…と、この時点で最寄空港が判明しました。
「デュッセルドルフ」です!
ミュンヘンめっちゃ遠い!
では、目的地はデュッセルドルフで。
航空券はいくらやねん。
成田⇔デュッセルドルフ往復便、
全日空の航空券価格は162,520円でした!
航空会社はいろいろありますし、
時期によっても変動するかと思うので、
あくまで目安です。
デュッセルドルフからハンバッハ:公共交通機関で約2時間
固定観念で「ドイツ=自動車大国」と思ってますが、ドイツ童貞たる僕はアウトバーンに乗ってはいけないので、公共交通機関を選びます。
デュッセルドルフからハンバッハまでは、電車とバスでだいたい2~3時間。
遠いよね。
デュッセルドルフ到着からの直ハンバッハは体力的に無理だと確信してるので、デュッセルドルフで1泊しますかねぇ。ジャーマンポテトとドイツビールで乾杯だ!ダンケ シェーン!
ハンバッハ採掘場を見学
さあ、
ここまで来たらもう見ずには帰れないぜ!
バケットホイールエクスカベーター!
ここまで純度100%の妄想シナリオでお届けしてますが、いざ現地でバケットホイールエクスカベーターを見ようとなると、どうすればいいんでしょう。
誰に頼めばいいんだ…?
危険をともなう土木の現場ですし、現場の方々はお仕事中なわけです。
どなたか立場のある方に、話を通しておく必要があるでしょう。
どこの馬の骨とも知れないアジアンが、ノンアポでひょっこり訪れたところで相手にされるはずはありません。それどころか、武力で排除される可能性すらあります。
そんなことにはなりたくない、
異国での最期なんて寂しすぎる!
と思って調べていたら、どうやらツアーがあるらしい。
それもそうか、
ギネスブックに載るほどの、つまり世界一の存在なわけだから、「それを見たい」という需要はあって当然。需要があるなら供給がある、よって便利なツアーがある!
その考えが、すっかり抜け落ちていました。
う、うかつだった。
そんな中、(一部の人には)めちゃくちゃ面白そうなブログを見つけたのでリンクさせてもらいます。
はちまドボク 何かからはみ出した、もうひとつの風景
https://hachim.hateblo.jp/
きっと、知る人ぞ知るどころか高名な方だとお見受けするので、僕のような「にわかエクスカベーター」が批評するなんておこがましいんですが。
最高にクールじゃないですか、このブログ。
なんだか土木に目覚めそうです。
9年前に書かれた、「バケットホイールエクスカベーターの見学バスツアー」について触れた記事もありましたよ。
外部リンク
露天掘り炭鉱ぐるり見学バスツアー|はちまドボク
「湯けむり温泉周遊バスツアー」みたいなノリですが、見学時の座席の位置取りにいたるまで、貴重なアドバイスに満ちています。
結論から言うと、リスクを冒しても見に行くべきだね。わざわざ日本からこのためだけに来るのは、少々ギャンブル性が高いのだが、当たれば間違いなく大満足できる。
露天掘り炭鉱ぐるり見学バスツアー
はちまドボク
著者の八馬氏はそう仰っています。
ますますバケットホイールエクスカベーターを見たい欲が高まりました。
うっかり見に行きたいですね。
おわりに
非常にざっくりですが、
バケットホイールエクスカベーターに関するまとめはこちらです。おさらいしましょう。
まとめ
- 長さ:11両編成山手線
- 高さ:仙台白衣大観音
- 重さ:10万人のマツコ
製造価格は110億円~130億円、
製造期間は5年です。
「高くて買えない!」
「置き場がない!」
というパンピーな方は、
- LEGO TECHNIC
- ドイツレベル社プラモデル
- ロングタイプトミカ
上記の選択肢をご検討ください。
ただし、LEGOとトミカは絶版です。
「要らねえよ!」
という僕のような方は、現地へ現物を見に行きましょう!
主にドイツの採掘場で、
バケットホイールエクスカベーターは稼働しています。
最大級の「Bagger 293」を拝むなら、
ドイツ北西部・ハンバッハ採掘場で!
最寄り到着空港はデュッセルドルフ、
成田から往復で16万円くらいです。
とはいえCOVID-19で現地に行きにくいので、映像で楽しむのが現実的ですね。
YouTubeでもいいですし、NHKの『ウルトラ重機』で観られますよ。
以上!
連載『アレの名は』について
割と軽い気持ちで始めてしまった連載で、いくつかテーマはあるものの、長期的な見通しはまったく立ててません。
初回のテーマがなぜ「バケットホイールエクスカベーター」なのかも不明で、書いてる本人すらわかっていない有様です。
とはいえ「ふと気になったものを、ちょっと掘り下げてみる」試みに面白さを感じているので、ゆるっと続けていけたらなという所存です。